見知らぬ人。

なんかね、仕事しててね、
今日はすごくなんか仕事したなー、
頑張ったなーって思ったのね。
剃刀で顔は血だらけ、足は擦り傷だらけ。
でも、僕は別に痛いのなんて全然平気で、
普段は、お前はダメだダメだと言われまくってるのに、
こういう自傷系のことはなぜかすっとできて、
びっくりされて、そして褒められるのね。

そして、終わった後、自分にできた傷を見て、
ああ、頑張ったなって、今日は仕事したなって、
何か充実感みたいなものを感じて、
とても満足だったんです。

でも、帰り道、雨の中を歩いていると
なぜか突然ものすごい虚無感に襲われ、
はっと気づいたら
逆の方向に歩いていく人と傘が絡んでいて、
すいませんって傘をより高い位置に上げた瞬間、
顔面に雨の雫がぼたぼたと降りかかり、
そうしたら、なんか、
ああ、別に今ここで死んでもどうってことないなって思ったの。

雨に色がついてなくてよかった。
もし雨が赤かったら、顔中血だらけ。