Philosophy

昨日書いたとおり今日はゼミだったんですけど、
なんか新しく入ってきた3年生の中に一人韓国の人がいて、
結構刺激的でわりと面白かったです。

あのー、ちょっと興味のない方には
おそらくこの世で最もどーでもいい種類の話だと思うんですが、
音韻論の話ね。
音韻(音素ともいう)って知ってますか?
僕はこれでも言語学専攻なので、一応知ってるんですが、
例えば、僕たち日本人は普段何気なくしゃべってる時に、
本の「ん」と本箱の「ん」と本棚の「ん」と本郷の「ん」って
全部同じ「ん」だと思ってますよね。普通の人は。
だからこそ、全部同じ「ん」という
ひらがなで表記してるわけなんですが。

ところがですねー、実際に発音してる
物理的な音声ってのは、これ全部違うんですよ。
わかりやすいのは本箱と本棚だと思うんだけど、
本箱の「ん」は次の「ば」の影響で唇を閉じています。
つまり、英語でいうところのmの音。
本棚の「ん」は次の「だ」の影響で、
実際に自分で言ってみればわかるけど、
舌が上の前歯の裏か、あるいは
それよりもうちょっと上の歯茎のあたりにくっつくはずです。
これは英語でいうところのnの音。

このように、上で挙げた例の「ん」
舌の位置とか違うし、物理的には全部違う音声なんですね。
でも、日本語ではこれを全て同じ「ん」と捉え、
伝統的に1つの「ん」という音素にくくってるわけです。
そして、その中で生きてる僕たちは、
日本語を身につける過程で
それを同じ音にしか感じられなくなった。
区別して聞き分ける必要がないから。

ところが、韓国語を始めとして他の多くの言語では
これらの音を峻別します。
日本語ではトンの「ん」をnで言おうがmで言おうが
ngで言おうが、別に1000kgを表す事に変わりはないけど、
韓国語だと、nのトンだと「お金」になるし、
ngのトンだと「銅」になっちゃいます。

そうした言語の中で生きてきた人が聞けば、
上で挙げた「ん」は当然全部まったく違った音に聞こえます。
「なんで全然違う音なのに、同じだと思えるの?」
ということになるわけですな。

逆の事も当然あります。
韓国語の音韻体系で対立するのは
有声音か無声音かではなく、有気音か無気音かです。
そのため、「か」と「かはー」
(息を強く出しながら「か」と言う)は区別するけど
「か」と「が」を区別しません。